特別講演
摂食行動の生理学
〜「今、何を食べたいか?」を決める脳の機構〜
朝日大学歯学部口腔機能修復学講座口腔生理学分野教授
硲 哲崇 先生
ありがたいことに、今日の我々は、予算が許しさえすれば非常にたくさんの食物を口にすることができるようになった。
では、私たちのような雑食動物が、多種多様の食物を呈示されたとき、「今、何を食べたいか?」を、どのような基準で決めているのであろうか。
また、「食わず嫌い」や「好き嫌い」という現象は、どこまで科学的に説明可能であろうか?
演者らは、これまで、このある意味俗物的な問題に、脳科学や神経生理学の立場から説明が出来ないかどうかを検討してきた。
本講演では、食経験、味覚や咀嚼、体内の栄養状態を精密に計算して、「今、何を食べたいか?」という食物選択行動を極めて合理的に脳が調節するようにプログラミングされているという事実を紹介するとともに、食物の食わず嫌いや好き嫌いの形成機構が、科学的にも十分説明可能であることも紹介したい。
本講演の内容から、子供たちに好き嫌いをさせないためには、どのように食事を提示すればいいかなど、食育に関する各種問題の解決の糸口を見つけていただけるなら演者としても幸いである。
講師略歴(平成23年6月現在)
昭和62年 朝日大学歯学部卒業
平成3年 朝日大学大学院歯学研究科修了 (歯学博士)
平成3年 大阪大学人間科学部行動生理学講座 助手
(平成5年から1年間、米国ルイジアナ州立大学動物生理学部門 博士研究員)
平成12年 朝日大学歯学部口腔機能修復学講座口腔生理学分野 准教授
平成20年 朝日大学歯学部口腔機能修復学講座口腔生理学分野 教授
主な役職:日本味と匂学会学術広報委員、日本味と匂学会雑誌編集副委員長 他。
テレビ出演:NHK「解体新ショー」、テレビ東京「所さんの学校では教えてくれないそこんトコロ!」他。
主な著書:味のなんでも小事典(日本味と匂学会編:講談社)、食感創造ハンドブック(サイエンスフォーラム)他。